『名雪…』
…ん?
『俺には、奇跡は起こせないけど…』
…なんだ?
『でも、名雪の側にいることはできる』
どっかで聞いたせりふだな。
『約束する』
…って、ちょっとまて…
『名雪が、悲しい時には、俺がなぐさめてやる』
これって…
『楽しいときには、一緒に笑ってやる』
あの目覚ましじゃねぇか?
夢でも見てるのかな…。
えっと、次のせりふは…
「了承」
そう、了承…て。
マテ。
がばぁっ!
俺は思わず、布団から飛び起きていた。
「あ、祐一おきた」
「おはようございます、祐一さん」
「…」
言葉の出ない俺に向かって、その親子はいつもどおりにこやかに微笑んでいた。
その手に、禁断の目覚ましを持って…(大げさな)
そんな約束の一日
『目の覚めるような…』
「さめたっちゅうねん!!」
かちっ
呆然としている間にも流れ続ける目覚ましに一応突っ込みを入れておいてから、祐一は名雪の持っている目覚ましを瞬殺した。
「祐一、おはよう」
「…この状況で第一声がそれか?」
窘めつつも、いまさらどうしようもないので自然とあきらめた口調だった。
「おはよう、名雪、おはようございます、秋子さん」
挨拶を交わすと、そのまま秋子さんは微笑みながら下に降りていった。
「…、何かうれしいことでもあったのか?」
秋子さんの様子がいつもと違うことを察して、隣で同じくうれしそうな名雪に尋ねてみる。
「なんかあったのか?」
名雪はすこし困ったような表情に代わる。
それでもうれしそうで、さらにほほがすこし赤くなっていた。
「…お前もだ」
いつもとほんの少し違うだけなのだが、それが祐一には何か悪い予感のようにすら思えた。
「う〜んとね〜」
首をかしげる名雪に、祐一はすこしどきっとしていた。
(な、なんだこいつ。こんなに可愛かったっけ?)
だが、名雪のほうはそんな祐一にはお構いなしだ。
「祐一、何で飛び起きたか覚えてる?」
いつか見たいたずらっぽい表情で笑う。
「何でか…えっと、たしか…。目覚ましが聞こえてきて、その後了承って…」
「うん」
名雪は、とてもうれしそうだ。
「あのね、あの了承は、目覚ましに対して言ったんだよ」
「はぁ?目覚ましに?」
「うん」
相変わらず、うれしそうだ。
「…ちょっとまて」
「うん?」
再び首をかしげる名雪。
なぜ目覚ましに必殺技をかける必要があったのか思案していたが、そのせりふを思い出し、思わずつぶやいた。
「あの、名雪さん」
「なあに、祐一?」
「了承って言う前のせりふを、少し覚えてるんですが」
「うん」
「まさか…そういうことか?」
「うん!」
名雪は大きく頷いた。
「…なぁ」
「どうしたの祐一。顔が赤いよ」
「お前さぁ、恥ずかしくないの?」
「祐一、おかしなこと訊くね」
いつか見た笑顔。
祐一はすぐさまそのせりふを再現した。
『恥ずかしいに決まってるよ』
「え?」
しばらく、見つめあう。
そして、どちらからともなく笑い出した。
「ま、いいか」
「うん、まぁ、いいよ」
名雪はうれしそうな表情のまま目覚ましを…正確には手を…振り振り部屋を出て行った。
「あ、そうだ、今日は、デートだからね」
そんな言葉を残して。
「わぁってるよ」
誰もいなくなった部屋で、小さくつぶやいた。
二人…いや、名雪一人いるだけで、ずいぶんと部屋の印象が明るくなっていたことに、いまさらながらに気がつく。
「やっぱり、あの親子には一生勝てそうもないな…」
思いながら、なんとも情けない悟りだなと苦笑をもらす。
その表情には、いつもの祐一が見せる毒気はまったくなかった。
「さて、着替えるか…」
カーテンをあけ、窓を開け。
さわやかさをいっぱいに取り込む。
淡く染まり始めた街に負けないくらい、いい一日になりそうだった。
END
こんにちは
管理人セラフです。
なんとなく書いてみた短編ですが、
私の書くものにしては非常に短く、
まとまりもそれなりではないかとおもいますが。
駄文であることにかわりはないんですけどね(^^;
しかも、KANONが分からない人には何のことか分かりません。
私はメインの中では名雪が一番好きですので、
多分書く回数も増えるのではないかと。
とりあえずの肩慣らし作品です。
ぜひ、簡単でいいので感想をください。
そして、早く依頼ものを書けよ、私(^^;
2001/9/2 AM2:15
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